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はじめてのクリスマス

むかしむかし、ナザレという町にマリアという若い女の人が住んでいました。マリアは、ヨセフというまずしい大工ともうすぐ結婚することになっていました。

ある夜、ひとりの天使がマリアのところに現われ、部屋はまぶしい光でいっぱいになり、マリアはおどろいて目をさましたのです。「いったい、どうしたのかしら?」 マリアがおどろいていると、天使ガブリエルがこう言いました。「おそれることはない、マリア。あなたは神さまの子供を生むのだ。その子をイエスと名づけなさい。」 天使の言葉にマリアは大喜びでした。

さて、何か月かして、ローマの皇帝(こうてい)アウグストは、「全ての人は故郷にもどって税金(ぜいきん)を払わなくてはならない。」との命令を出しました。ヨセフとマリアも、故郷のベツレヘムへもどらなくてはなりません。

ベツレヘムまでは大変な長旅です。その上、マリアにはもうすぐ赤ちゃんが生まれそうです。二人は、ベツレヘムで宿屋(やどや)をさがしましたが、どこもかしこも人でいっぱいです。ヨセフは祈りました。「神さま、お願いです。どうか泊まるところをお与えください。」

二人は、ある古い宿屋の戸をたたきました。主人が答えました。「悪いがね、わしのところもいっぱいだ。税金のことで人が多くって、部屋などどこにもないよ。」

「わたしたちはナザレから旅をしてきましたが、じつは妻にもうすぐ赤ちゃんが生まれそうなんです。泊まるところがどうしてもいるんです。」 すると、宿屋の主人は少し考えてから言いました。「そうだな。たいしたところじゃないんだが、この先に馬小屋がある。それであんたたちが良ければ行ってみるかね?」 ヨセフとマリアは大喜びでした。

赤ちゃんを生むにはちょっと変わったところですが、二人は神さまへの感謝の気持ちでいっぱいでした。

そして、その夜、マリアにとてもかわいらしい男の子が生まれました。マリアはその赤ちゃんをあたたかな毛布につつんで、飼い葉おけに寝かせました。飼い葉おけというのは、動物たちにえさをやるために草を入れておく箱みたいなものです。それが、その赤ちゃんの生まれて初めてのベットだったのです。

ちょうどそのころ、丘のふもとで羊飼いたちが羊の番をしていました。すると、とつぜんまばゆいばかりの光が空一面を照らしました。そして、天使が現われ、こう言ったのです。

「いと高き神さまに栄光あれ! み心にかなう人に平和あれ!」 はじめ、羊飼いたちは何が起こっているのかがわからずに、おそれていましたが、天使がこう言ったのです。

「おそれることはない。今日ベツレヘムに救い主キリストがお生まれになった。あなたたちは、馬小屋の中にその方を見る。」 すると、とつぜん夜空いっぱいに天使たちが現われ、喜びにみちあふれて賛美(さんび)の歌を歌いました。「いと高き神さまに栄光あれ。」

羊飼いたちは丘を下り、ベツレヘムにたどり着くと、馬小屋と飼い葉おけをみつけました。まさしく天使が告げたとおりでした。

ヨセフは羊飼いたちをまねき入れて、生まれたばかりの赤ちゃんを彼らに見せました。羊飼いの少年がたずねました。「赤ちゃん、何ていう名前?」

「イエス、っていうのよ。」と、マリアが答えます。これが、最初のクリスマスにおこった本当のお話です。神さまが、その息子であるイエスさまをこの世に送ってくださった日が、クリスマスのはじまり。クリスマスの意味は『キリストマス』、つまりイエス・キリストの誕生をおいわいすることなのです。

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